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  • Posted by 葉月

その先へ 26


軌道修正したはずが、どうしてこうなる。
ベラベラと細かいことまで喋る西田が憎らしい。
俺に何か恨みでもあんのかよ!

尚も続けられる話にまた警戒しなくてはならなくなった俺は、腕を解きデスクを指先でコツコツ叩いて落ち着きをなくしていた。

「パーティーとは別に、副社長を心配なさった社長が、お見合いを何度かセッティングなされることもあったのですが、その度に何かしらしでかしますので、ならばと、周りの女性を牽制するためにも防御壁となる女性をお勧めしたところ、副社長は中島さんしか心当たりがなく、このような契約に至りました」

「つまり、恋人がいると世間に思わせる為に……ですか?」

「はい、そういうことです」

「そうでしたか。……だとしたら、同意の上での契約みたいですし、今回の慰謝料請求は難しいでしょうね」

だろ? と、牧野の顔色を窺いながら何度も頷き同意するが、「でも……」と、続きを見せる牧野の声が、ワントーン下がったのが気になって、指先の動きをすかさず止めた。

「気持ちは分かります。都合良く使って後は知りません、ですか。恋人でもないのに男の欲望の為にはそれをも利用した挙げ句、用なしとされれば、喩え慰謝料が取れなくても、請求したくなる怒りくらいは沸き上がるんじゃないでしょうか」

待て。一体、何の話をしてる?

辛うじて、牧野に変なスイッチが入ったらしいことは悟り、西田に助けを求める視線を投げるも、やはり恨まれてんのか、わざとらしいまでに壁の方へと目線を流し、俺を視界に収めようとはしない。
おまえ覚えとけよ!と西田を詰る前に、牧野を落ち着かせるのが先決だ。

「牧野、何言ってんだよ。欲望? 意味分かんねぇんだけど」

「分からない? 契約とは言え、8年も女性が側に居たってことは、それなりにあんたを思ってたからじゃないの? それなのにあんたは、彼女の気持ちを利用して体まで手に入れたんでしょうが!」

「はぁ? なに言ってんだ? そんなもん手に入れてねぇし、入れたくもねぇよ!」

「何をすっとぼけてんのよっ! 私に見られたの忘れたわけ?」


あ…………? と、暫し考え思い付く。

もしかして、あの夜。
俺が同意の上で……、いやいや、寧ろ俺が乗り気であんな状況になったとでも思われてんのか?
あれは、どう見ても俺が絡まれてただろうよ。

そう考えてる内にも、スイッチが切れない牧野の攻撃は続いた。

「12年前だって今回だって、あんたは良いように扱ったんじゃないの?」

また出た12年!
おまえの話を理解するだけでもやっとなのに、現在と過去を行き来しなきゃなんねぇ俺の脳は、相当な忙しなさだ。

12年前のことは説明したのに、まだ誤解してるのは何故だ。
頭をフル回転させてやっと行き当たったのは、あれか?
浮かび上がるあの日の光景。
それは、牧野が去ってった時だ。
あの時もあの女に纏いつかれ…………あ、なるほどな、と、やっと牧野の言う意味を理解したものの、あまりの拗れっぷりに、もう目眩まで起きそうだ。

あれだって違うんだ……と情けなくも泣きを入れたくなる。
振り払う前におまえが部屋に入って来たから気を取られ、あの女の行動なんて意識から消えてたんだ!
おまえが来てあの女も固まってたから、キスもしてなければ牧野が出て行って直ぐ振り払ったし、その後にタマも来たからあの女も帰った。疚しいことなど何一つない!

そう伝えたいのに、気ばかりが先行した俺は、

「勘違いするくらいなら、最後までしっかり見とけっ!」

声を張らせた上に言葉足らずで、牧野の怒りのアクセルを更に踏み込ませたらしい。

「あんな場面に遭遇して、どこにじっくり見るアホがいんのよっ! このバカ男ーーーっ!」

ふらつく西田に、揺れる俺の脳。
何とか立ち上がって左右の掌を押し出し、落ち着けとアピールする。

「牧野、誤解だ! ホントに今も昔もなんもしてねぇって。この前の夜だって直ぐに摘まみだした! だいたいよ、牧野?」

落ち着かせようと、俺の声も自ずとゆっくりと柔らかさが増す。

「反応もしないのにセックスなんて出来ないだろ? 出来ねぇよな? 興味のねぇ女の裸見せられたって下半身が言うこと聞かねぇんじゃ、セックスなんて無理な話だろ?」

実情が塗り替えられてる牧野の暴走を止めねばと気が急いて、何とか宥めすかそうと俺だって相当に必死だ。
なのに、何故だ。

「…………」

広がる静寂の中で無表情となった牧野は、冷たい視線を投げながら後退る。
壁を見ていたはずの西田までが、能面面で俺を見ていた。

……間違ったか。言葉足らずじゃダメだと付け足しすぎたか。

「……西田さん。私、力貸すより先に、本気で副社長をセクハラで訴えてしまうかもしれません」

「その時は私が証人として牧野さんを援護致します」

「心強いです」

「あー、もうごちゃごちゃ言うなッ!ふざけんじゃねぇっ!」

一気に頭に血が上る。
青筋だって浮かんでるに違いない。

こんな話ダラダラと続けてられるか!
あの疫病神女め。
これで牧野に嫌われたら唯じゃおかねぇ。
一気にこの場でケリつけてやる。

「西田! あの女に今すぐ電話を繋げっ! 二度とふざけた口叩けねぇようにしてやるっ!」

大きく溜め息を付きながらも、西田はジャケットからスマホを取り出し操作し始めた。
よっぽど暇なのか、呼び出すと相手は直ぐに出たようだ。

「もしもし西田です。副社長からお話がありますので電話を代わります」

一歩踏み出し差し出された西田のスマホを引ったくった。

「てめぇっ、何が慰謝料だっ! 契約以外の行動を取ったんは、てめぇの方だろうが!
あっ? …………婚期が遅れたのは契約のせいだぁ?
ふざけんじゃねぇっ! 結婚出来ねぇのは、てめぇの顔も性格もブスだからだっ!
いいか? もう一度契約書読み直せ! これ以上何か仕出かしたら違約金が発生するって頭に入れとくんだな! それでもまだ舐めた真似すんだったら、こっちも黙っちゃいねぇぞ! 二度とふざけたこと言えねぇようにしてやるから覚悟しとけッ!」

電話を切りスマホを西田に投げ返す。

「これで一件落着だッ!」

神経を磨り減らし過ぎて消耗した体を重力任せに椅子に乗せると、だらしなく身を預けた。

「これが落着? 侮辱とほぼ脅しだった気が……私、この人をカバー出来る自信ないんですけど」

「すっかり感情を取り戻されたようで。そこだけは良い傾向だと前向きに捉えましょうか」

「良い傾向? いい迷惑の間違いでは?」

もう反論する気力さえ残っちゃいない。
そんな俺を気にも掛けず、

「兎に角、中島さんには調査員を暫く付け動向を探らせます。報告は牧野さんへさせますので、何かあれば判断して対処して下さい」

「うーん、大丈夫だとは思いますが……取り敢えず分かりました」

「それから、これからはパートナーは牧野さんにお願いしますから」

「それは絶対嫌です」

「ですが、このような───」

すっかり俺など除外して、二人は話ながら部屋を出て行った。
上司を上司だとも思わない遠慮なしの二人の話に堪え忍び、挙げ句に、俺の存在を気にも止めずにここに来て放置か。

これでパートナーの件まで蹴られたら、西田の奴、唯じゃおかねぇ。

せめてもの恨み節を、疾うに消えた西田の背中に向け念じ続けた。

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  • Posted by 葉月
  •  8

Comment - 8

Mon
2018.04.09

-  

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2018/04/09 (Mon) 00:33 | REPLY |   
Mon
2018.04.09

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2018/04/09 (Mon) 03:10 | REPLY |   
Mon
2018.04.09

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2018/04/09 (Mon) 10:12 | REPLY |   
Tue
2018.04.10

-  

牧野つくしは何様のつもりですか?
自分こそ上司に対して口のききかたも
常識も無いですね
偉そうに嫌いです

2018/04/10 (Tue) 11:53 | REPLY |   
Tue
2018.04.10

葉月  

コメントありがとうございます!

ス******* 様

こんばんは!
いつもありがとうございます。

やっとつくしの誤解が解けるところまで参りました!
西田さんの説明の上でのつくしの誤解は、契約に反して、パーティーでもない日に執務室であの様な場面を目撃してしまったのと、20話にてつくしが"トラウマ"と発言しているところからも、感情が先行し誤解を覆すまでには至らなかった模様です。
以上、補足でした(汗)
西田さんは、二人を心配しながらも、司に対しては楽しんでること間違いなしかと(笑)

海ちゃんへの司の暴言は、逆恨みでつくしに向かわなければ良いのですが……。
警戒するに越したことはありません。
引き続き、海ちゃんの動向を警戒しつつ、つかつくの二人を見守ってやって下さいませ。

コメントありがとうございました!

2018/04/10 (Tue) 20:29 | EDIT | REPLY |   
Tue
2018.04.10

葉月  

コメントありがとうございます!

*香 様

こんばんは!
いつもありがとうございます。

司、耐えるの巻きです。
そもそもは、海ちゃんがどの様な女性かと知りながら契約を結んだ司にも非がありますので……。
ここは、我慢して貰うしかないかと(汗)
ジレジレですが、忍耐力は養えるかもしれません(苦笑)

また、体調にもお気遣い下さいまして、ありがとうございますね!
薬を早めに飲めれば良かったのですが、仕事中だった為にタイミングを逃してしまい、夜は早々に休んでしまいました。
今はもうすっかり元気です!

コメントありがとうございました!

2018/04/10 (Tue) 20:37 | EDIT | REPLY |   
Tue
2018.04.10

葉月  

コメントありがとうございます!

ゆ**** 様

こんばんは!
引き続きお付き合い下さいまして、ありがとうございます。

あまりの拗れ具合に、司くんからは余裕が奪われてしまったようです!
パートナーはどうなるのか、全ては西田さんの手腕にかかってしまいました。
きっと司が頼んでも、つくしの性格では頷きそうもないですし、全ては西田さん頼みです(笑)

もうすっかり春ですよね!
なまじ暖かな気温を味わってしまいますと、一段と寒さに弱くなってしまいますものね。
このまま穏やかな気候が続けばと願うばかりです。

コメントありがとうございました!

2018/04/10 (Tue) 20:42 | EDIT | REPLY |   
Tue
2018.04.10

葉月  

コメントありがとうございます!

無記名 様

こんばんは!
先ずは、お名前がございませんでしたので、無記名様とさせて頂きましたこと、お許し下さいませ。

お話の方ですが、会社とはいえ、過去を含めての私的な内容の会話ですので、上司と部下という垣根を飛び越えてしまいました。
色々と思うところもあるとは思いますが、あくまで拙宅に於いてのつくし、という前提の上でご理解頂き、温かく見守って頂けたなら幸いです。

お時間を割いて頂きまして、ありがとうございました!

2018/04/10 (Tue) 20:49 | EDIT | REPLY |   

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