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Archive: 2023年03月  1/1

Lover vol.32

――――あの男、何かしでかす気じゃないでしょうね。最初こそ身を震わせながら警戒していたものの、ふざけたネーミングの『宝物探し』旅行から、早一ヶ月。予想に反して、奴から何の音沙汰もない。冷静になってよくよく考えてみれば、立場のある男だ。何を仄めかしての発言だかは知りたくもないが、『――俺は全力で行くからな』と宣(のたま)っていたバカ男に、好き勝手ができる自由などあるはずがない。それに、発言自体が、お坊ちゃ...

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Lover vol.31

組んでいた長い足を解き、立ち上がった司が吐き出したのは、「決まってんだろ。そこにいるバカ女の態度にだ」聞く者を怯えさせる声に乗せた、悪罵。バカ女って⋯⋯牧野のことか?愛する女の間違いじゃなくて!?決して小心者ではなく、ただ心配性なだけである俺は、雲行きの怪しさに、ぶるっと身を震わせた。 Lover vol.31ゆっくりと牧野に近づく司。その気配に気づいた牧野は、食事こそ止めたが、コーヒーを飲む余裕はあるらしい。テ...

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Lover vol.30

「おっ、帰ってきたぜ! でもよ、何で別々なんだ?」総二郎が2階の窓にへばりつきながら首を傾げる。総二郎や類と共に一日遅れで合流した俺たちは、無人島にひっそりと建つ屋敷の中、司や牧野の関係がどう変化したのか、二人の帰りを今か今かと待ちわびていた。『牧野がどうにもこうにも⋯⋯』と、プラス思考の滋すら苦笑するあたり、限りなく司の一方通行ってとこか。まぁ、頑固者の牧野が、そう簡単に気持ちを翻したりはしないだ...

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Lover vol.29

――なっ、何を言い出した、この男は!自分から別れを告げた女に、しかもこの8年、会ったこともなければ、会話ひとつしたことのなかったこのあたしに⋯⋯「好きだ」そう言ったの?ぷつり、ぷつり、と自分の中の何かが焼き切れ、腹の底に怒りが溜まっていく。荒れ狂う感情は今にも内臓を突き破らんばかりで、『ふざけるなーっ!』と咄嗟に叫びそうになる。と同時に心を占めるのは、捨てられた女の矜持。それが理性を掻き集め、爆ぜそう...

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Lover vol.28

「つーかーさーーっ!」まるで光の届かぬ海底にでも落ちたような、酸素を取り込むのも難しく苦しい時間は、遠い向こう、浜辺から手を振る滋の甲高い声によって一瞬にして引き裂かれた。「帰ってきましたね」そう言ってクスリと笑う牧野のダチは、もう顔に困惑を滲ませちゃいない。寧ろ、清々しいようにも見える。多分、松岡は、敢えて滋たちと行動を共ににしなかったんだろう。言い難い話だろうとも俺に全てを打ち明けるために、自...

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Lover vol.27

 Lover vol.27「つべこべ言っててもしょうがないでしょ。何か私たちのことを勘違いしてるみたいだけど、こんなことしても意味ないってわかってもらうには、丁度良いかもしれないし?」あっさりと牧野言われ言葉に詰まる。俺への気持ちが微塵も残っちゃいねぇってわかってはいても、いざ言葉にされりゃ気持ちが怯んで。そうして声を失っていた一瞬の隙。牧野は止める間もなくドレスを着たままプールに飛び込んだ。「牧野っ!」名前...

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Lover vol.26

私たちが降り立った場所は、かつて道明寺と二人で訪れた水上コテージ。まさか、こんな所に連れて来られるとは⋯⋯。小さな溜息を吐く道明寺もまた、行き先がどこかは知らされていなかったようで、「⋯⋯西田もグルだったか」と呟き、舌打ちをしている。にしても滋さん⋯⋯、何でここ!? Lover vol.26水上コテージに着いてもまだ、二人の間に会話はない。こちらを気にする道明寺の視線は感じても、話題もないし口を開くのも億劫で、結局、...

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