Archive: 2022年12月 1/2
2022年最後のご挨拶
皆様、今年も拙いお話にお付き合いくださいまして、どうもありがとうございました。個人的には、悲しい別れが幾度となくあり、心情的に辛い時もあった一年なのですが、書くことで、またそれを読んでくださる皆様がいたことで、気持ちの安定に繋がったと思っています。本当にありがとうございました!そして、来年こそは良い年にするぞ!と意気込みながら過ごしていた12月半ば。今年の災はまだ終わっていなかったのか、師走の忙しい...
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Lover vol.15

Lover vol.15大学で知り合ったダチのように、早くから跡継ぎとしての自覚を持っていれば、多分、こんなことにはならなかった。そんなダチも、欲に蠢く人間たちに翻弄され厳しい状況下に置かれはしたが、ヤツの人間性を慕って守る味方がいた。恋人を手放すこともなかった。好き放題やってきた俺とは何もかもが違う。もう少し俺も、真っ当な生き方をしていれば⋯⋯、そう悔やんだところで、全ては後の祭り。俺が散々しでかしてきた悪...
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Lover vol.14

「本日の予定は以上です。それと、今夜のパーティーが終われば、明日は一日お休みとなりますので、そのおつもりで」「は? 休み? んなの取ってる場合じゃねぇだろ」「いいえ。帰国前も帰国後も多忙な日が続いておりましたので、休息が必要かと。滅多に取れないのですから、明日の休みは有意義にお過ごしください。では、30分後に出発となりますので、また呼びに参ります」世間を騒がせている今。急なパーティーに行くのだって困...
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冬に舞い散る花びら《後編》

「うわぁー、すごぉーい! おおきいのできたね!」「やったぁー!」全身一杯で喜びを表す男の子と、男の子よりも少し小さい女の子。男の子の妹だ。真っ白な世界は寒いはずなのに、夢中で子供たちと遊んでいたら、背中がしっとり汗ばむほど身体は熱くなっていた。「良かったね、大きな雪だるまができて」「うん! おねえちゃんありがとう!」「いいえ。お姉ちゃんこそ、遊んでくれてありがとね」目線を合わせて前屈みで言ってみた...
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冬に舞い散る花びら《前編》

「うっ、寒い」駅を出るなり冷たい風が頬を切り、反射で肩を窄める。「天気予報当たるかも⋯⋯」一人呟いて見上げた空は、見渡す限りの雪模様だった。❅高層ビルが屹立した街の中を歩く。普段は、駅から吐き出された人たちでごった返すビジネス街も、土曜日である今日は、いつもの雰囲気と少し違っていた。スーツを脱ぎ捨てた人たちの方が多く、家族連れもチラホラ見える。世間では束の間の休息日。だけどそんなもの、私には必要ない...
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告知です
こんにちは。本日はタイトルどおり告知になります。でも先ずは、大雪に見舞われている地域にお住まいの皆様。大変な中で過ごされていることと思いますが、ご無事でしょうか。やむにやまれず出掛けなくてはならない方もいるでしょうし、出掛けられず不便を強いられている方もいると思います。寒さも厳しいのに電気代は高騰。雪かき等の労力だって必要でしょうし、その他を含めどれ一つとってみても大変なことばかりで、特に年末の忙...
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Lover vol.13

Lover vol.13「どう? 気に入ってくれたかな?」テーブルの上で輝くダイヤ。唖然とする私に、瀧本さんは笑みを湛えて訊いてくる。普通の女性なら、甘い艶を含んだ笑みに顔を染めるかもしれないけれど、生憎とイケメン抗体のある私には通じない。何より、この奇っ怪な言動は人を不愉快にさせる。詰めていた息を逃し、目に強い意思を乗っけて、真っすぐに瀧本さんを見据えた。「瀧本さん、お気持ちはお伝えしたとおりです。指輪は...
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Lover vol.12

金曜の夜のせいか、人も車も普段より多い気がする。けれど、幸いにも大きな渋滞には巻き込まれず車はスムーズに流れ、何とか時間には間に合いそうで、ふぅ、と安堵の息を吐いた。落ち着いた途端に考えてしまうのは、進のこと。実は本当にシスコンだった、ってことはないだろうけど、一体なにがあってあんなに口うるさくなったのか。思い当たる節はない。かつては、自宅に泥棒が入り、私の後ろに隠れて怯えるような子だったのに、今...
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Lover vol.11

Lover vol.11強張った顔のまま、進が真っ直ぐな視線を向けてくる。「姉ちゃん。念の為に訊くけど、その相手って、道――」「違うからっ!」進が固有名詞を出す前に即座に否定する。「なんで今更、道――」「じゃ、誰? 姉ちゃん誰と会うの?」私に負けず劣らず電光石火の早業で、今度は進が私の言葉を打ち払う。普段は人の話を良く訊くタイプなのに、珍しい。しかも、表情は依然ニコリともしない。進の態度を訝しく思いつつ、隣から...
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Lover vol.10

えーっ、ちょっと何よ、これ!明日って、いくら何でも急すぎるでしょうがっ!押し捲ったミーティングが終わって席に戻ってみれば、進からの伝言と共に白い封筒が置いてあって、中身を確認した私は目を丸くした。時計に目を遣ると、時刻はもうすぐ18時になろうしている。18時半の約束を思えば、直ぐにでも会社を出るべきだろうけど、どうしても一言文句だけは言っておきたくて、鞄とコートをひったくるなり社長である進の元へと急い...
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