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Archive: 2021年12月  1/2

ご挨拶

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こんにちは!先ずは、『愛のカタチ』にお付き合いくださいました皆様、どうもありがとうございました。後半に行くにつれ長くなってしまったお話を見届けてもらえて、大変有り難く思っております。25日に無事に完結した後には、『手を伸ばせば』の方を一本、年内に更新する予定でいたのですが、最終話を上げました、その日。想像もしていなかった知人の訃報に接しまして、お話に向き合う気持ちの余裕がありませんでした。申し訳ござ...

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愛のカタチ 7.(最終話)

降り立った神戸の街。教えてもらってやって来たのは、繁華街からほど近い場所にある、五階建てのマンションだった。見上げたマンションの前、居ない相手に向かって、心中で嘆きに喚く。あきらのヤツ、部屋番書いてねぇじゃねぇかよ!どうすんだよ。連絡先だって分かんねぇのによ。舌打ちしてから、「仕方ねぇ」不審者扱いされようが構わず、エントランスに足を踏み入れた。こうなったら、ポスト一つ一つを確かめ歩き、名前を見つけ...

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愛のカタチ 6.

男だけになったところで、あきらが俺を呼ぶ。「司、いつまでそこに座ってんだよ。こっち来いって」ベッドで上半身を起こした格好の身体は鉛のように重く、身動き一つ取れずにいた。記憶さえ戻れば、不安も焦りも何もかもが消え失せ晴れ晴れすると思ってたのに。晴れるどころか苦しくて、以前より酷く胸が締め付けられている。俺を苦しめるのは失くした記憶だけ。そう思ってきた独りよがりだった自分は、一体どれだけの奴らを巻き込...

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愛のカタチ 5.

「全部、思い出したんだよね?」確かめるように俺を見入る滋に、これ以上は隠し通せねぇと降参し、俺は黙って頷いた。「やっぱりね。司、分かりやすいんだもん。私、さっきもわざと『司』って呼んだんだよ? 道明寺って呼び続けてた私がね。なのに、特別驚くでもないし、私が大河原滋だって思い出したのなら、呼び捨てにされても違和感ないはずでしょ?だから、あぁ、記憶取り戻したんだなぁ、って直ぐに気付いたよ。それだけじゃ...

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愛のカタチ 4.

「道明寺? 気が付いた?」現実と夢の狭間を揺蕩った果て────。重い瞼をゆっくりと開けると、黒髪が頬に触れるくらいの距離から、俺を覗き込む心配そうな目とぶつかる。続けて辺りを見回せば、見慣れた男たちの姿もあって、寝てるこの場所が自分の部屋だと分かった。「司、分かるか? おまえ、俺のオフィスで倒れたんだよ。覚えてるか?」足元に近寄って来たあきらに頷けば、今度は類と並んでソファーに座っている総二郎が口を開...

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愛のカタチ 3.

「彼女を傷付けてるのは、道明寺さん⋯⋯、あなたでしょ?」松崎の指摘に胸の奥にチクッと痛みが走る。この痛みの原因が何なのかは分かってる。それは記憶を失くしちまった、あいつへの負い目。けど、「分かったようなこと言うな!」そんなことは、おまえに言われるまでもなく俺が一番分かってる。十年間ずっと記憶を失くし、今も尚、あいつを思い出せずに苦しめてるってことは。だからこそ、あいつに言われるがまま診察だって受けた...

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愛のカタチ 2.

「最悪な女だな。あんなんで秘書が務まんのかよ」翌日、俺はあきらのオフィスに来ていた。「おいおい、アポなしで突然現れたと思ったら、いきなりうちの社員の悪口かよ。勘弁してくれよ、俺だってそう暇じゃねーんだぞ?」あきらは、書類の上を走らせていたペンを置くと、ソファーで踏ん反り返る俺を見て肩をすくめた。俺が来た以上、仕事の継続は無理だと諦めたのか、内線でコーヒーを二つ頼むと、俺と向い合せのソファーに腰を落...

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愛のカタチ 1.

──── 一体何が足りねぇんだよ。心にぽっかり穴が空いたような虚無感。どこまで歩いても果てのない闇夜に迷い込んだみたいに、光が差し込まない世界に閉じ込められた感覚から齎されるのは、絶望的な孤独。時折、焦燥も合わさって、何かが足りないと、どうしようもない苦しみに藻掻きたくなる。長い間俺は、この得たいの知れない感覚に苛まれ続けている。記憶障害だと告げられた、十年前のあの日から、ずっと。だから、戻ってきた。...

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手を伸ばせば⋯⋯ The Final 5.

司と牧野に何の進展もなく、寧ろ後退したとも言える中、やっと夕飯となり牧野の手料理をご馳走になる。精神的疲労が蓄積された俺は普段より食欲はなかったものの、素朴な家庭料理の味わいは、心をほんのりと温かくさせ、ささくれ立った気分も少しだけ緩和されるようだった。そんな束の間の休息も、総二郎が話を蒸し返したのをきっかけに、敢えなく終了する。せっかく、お気に入りの肉じゃがをつついていたのに⋯⋯。 手を伸ばせば⋯⋯...

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手を伸ばせば⋯⋯ The Final 4.

早まるなよ、牧野!話せば分かる、きっと分かるはずだ!届いた試しがないテレパシーを幾ら送ってみても、やはり牧野からは何ら反応もない。焦りだけが加速し、硬直する身体に鞭打って『どうすんだよ、これ』と、助けを求めて画策した張本人に目を向けた。それを受けた総二郎も、流石に不味いと思ったのか、「⋯⋯牧野」重い口を開いた。あとは任せたぞ、総二郎!!何とか切り抜けろよ!  手を伸ばせば⋯⋯ The Final 4.「牧野⋯⋯、た、...

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