Archive: 2020年09月 1/2
Secret 15
「類、悪いな、突然」「あきらって暇なんだね」人の顔を見るなり憐れむ目でしみじみと言うな!「バカヤロー、俺だって暇じゃねぇよ!」アポなしで来たのは確かに申し訳ない。だが、これがジッとしていられるか!その原因となった週刊誌を手に持つ俺は、それを類の前にグイッと差し出した。「類、これもう見たか?」「うん。朝からテレビでも派手に報道してるしね」「司は何やってんだよ。牧野大丈夫か? そもそもどう思うよ、この...
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Secret 14
「パパ!」「おぅ、滋。元気そうだな。どうだい、司君の下でちゃんとやっているかな?」「勿論、ちゃんとやってるよ。そんなことより、どうしてNYまで? 仕事?」「まぁ、それもあるが、娘がお世話になっているんだ。司君に挨拶はしたが、楓社長にはまだだったからね。忙しくて日本にもなかなか戻ってこられないお方だから、司君も滋もこっちに来てるなら丁度良いだろ。この機会に、一緒に食事でもと約束を取り付けてある」「わ...
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Secret 13
急な道明寺さんのNY出張から十日。遠く離れた地からこの日本に届けられたものは、道明寺さんと滋さんとの熱愛報道だった。先輩と道明寺さんは、連絡を取り合ってはいるようだけれど、この記事が出てからは、おそらくまだなはず。先輩の心中を思えば笑顔を求められる因果な仕事など休ませてあげたい。でも、プライベートで何かあったからと言って休めるほど、大人の世界は甘くはない。尤も、先輩は大して気にした風でもなく、明る...
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Secret 12
─────カンカンカンカ~ン!!「起きてぇ、司! 今日も良い天気だよ!」けたたましい音が響く、いつもと変わらぬ朝。その中にありながらいつもと違うのは、こうして元気に中華鍋を叩くつくしの振る舞いが、無理して作られているってことだ。つくしの些細な変化など俺は夕べからとっくに気付いている。決して、気のせいなんかじゃなく。昨夜、つくしの様子はどこかおかしかった。怒っているのかと訊ねても、返ってくるのは否定のみ...
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Secret 11
「司君。今日から滋がお世話になるが宜しく頼むよ。うちでも秘書の仕事はしていたが、世間知らずの娘だからね。司君の傍で色々と勉強させてやっくれたまえ」 突然の滋の歓迎会。 秘書課で別の日に予定を組んでいたらしいが、割り込んで来た滋の親父が、強引に俺と秘書課全員を招待したいと場を設けてしまった。 くそっ、この親父さえしゃしゃり出てこなけりゃ、さっさと帰れたっつうのに。 「秘書課の皆さんも娘を頼みますよ。...
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Secret 10
司の怒り心頭という波乱の幕開けから始まった今日も、全ての仕事をやりこなし、終わりを迎えようとしていた。類のところの撮影を終えたばかりの今は、控え室にて帰り支度をしているところだ。予定より早く撮影が終わったのは幸いだった。あれだけ早く帰って来いと念を押してきた司のこと。遅い帰宅になったりでもしたら、朝の再来とばかりに、恐怖の顔をまた拝む羽目になるかもしれない。もっとも、早く帰宅したところで、花沢物産...
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Secret 9
「はい、はーい!」朝早くからの訪問者に、バタバタと玄関に向かって駆け出す。「おはようございます、先輩」扉を開けた先にいるのは、予定より早く来た桜子だ。仕事に行くにはまだ早い。かなり余裕があるし、とりあえず、いつものように中へと入ってもらう。「桜子、今日はこんなに早くなくても良かったんじゃないの?」「えぇ。でも、今日は滋さんの初出勤でしょ? ご挨拶を兼ねて覗きに来てみました」「三条、お前も暇人だな」...
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Secret 8
「つくし久しぶり、元気だった?」「はい、本当に久しぶり。滋さんもお元気でした?」「うん、この通り元気だよ!」何も変わらない滋さんの笑顔。私が過剰に意識しすぎていただけなのかもしれない。玄関でそんなやり取りをしていると、ふと視線を横に向けた滋さんが、スタンドテーブルに置いてある物を指差し、素敵、と呟いた。滋さんが指差したのは、リングピローだ。ワイヤーで作られた、シンデレラに出てくるカボチャの馬車のよ...
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Secret 7
危機感がないのか、自分達の立場を分かっていないのか。先輩は、この状況すら喜ぶ幸せボケで、何を言っても耳に届いているのかさえ怪しい。昨日発売された週刊誌のスクープで世間を賑わせていると言うのに、無邪気に嬉しがる先輩に、芸能人としてどうなの、それ? とマネージャーとしては、首を傾げたくなる。でも、その気持ちは痛いほど分かる。道明寺さんと離れていた遠距離時代は、本当に耐え忍んでいる状態だった。気丈に振る...
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Secret 6
私の悪戯がバレて数週間。私達は相変わらず、お互い忙しい日々を送っていた。夕飯を一緒に摂るのは難しく、私より帰りの遅い司を待ち侘びるのはいつものことで、司が帰って来てから少しだけ会話を楽しみ、そして、同じベッドに入り共に朝を迎える。朝食だけは必ず二人で摂るのが約束で、いつだって司は旨いと言って食べてくれた。そんなささやかな日常に幸せを感じつつも、妻としてもっとしてあげたいこともあるのに、それが儘なら...
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