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Archive: 2018年04月  1/2

その先へ 34

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車が静かに流れる中、私は目を閉じたままでいた。長く真っ直ぐ続く道。車窓を見なくても、ここが道明寺邸の正門へと繋がる道だと分かる。色んな思いが胸を掠め、そして一つの記憶に固定する。瞼の裏に映るのは、遠い昔の止まない雨だ。呑み込まれそうな真っ暗な夜に、二人を遮断するかの如く叩きつける雨。その雨音に本音を隠して私が投げつけた言葉は、道明寺の胸を抉り、表情から色を奪った。あの日の道明寺の顔を、今でもはっき...

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その先へ 33

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日曜日の夜。いつもより早い夕食を進と二人で摂り、入浴も済ませた。この後の時間の潰しかたは、もう仕入れてある。昼間に宛もなく街をブラつき、立ち寄った本屋で大量に買った小説の文庫本だ。時間を潰す目的で大人買いしてしまった。昨日は昨日で、夜になったらグッスリ眠れるようにと、無駄に掃除に明け暮れ、疲れるまで体を酷使した。そうでもしなければ、仕事のない休日は、あの日言われた道明寺の言葉へと意識を持って行かれ...

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その先へ 32

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「副社長、今日はこれでコーヒー5杯目です。飲み過ぎなのでは?」「放っとけよ」「牧野さんが訊いたら、雷を落とされそうですね」牧野、って名に反応して西田を睨み上げても、どこ吹く風。嫌味なほどその表情は乱れない。「次はハーブティーをご用意させて頂きます。それと、夜のお酒は程々に。そして、此処が一番重要です。いい加減、本気で仕事に取り掛かって下さい。このままでは、一週間での帰国は無理です。これ以上、遅れる...

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その先へ 31

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あれからパーティーを直ぐに抜け出し、行きと同じ様に部屋で着替え直してから、食事に行くために、俺達はそそくさと車に乗り込んだ。「あー、お腹すいたぁ」車が走り出すと同時に、力尽きた様に頭を垂らした牧野が言う。必要以上に気が張ってたんだろう。漸く解放された今、ぐったりはしているが、その表情からは緊張の色が消えている。やっと通常の食欲も取り戻した様だし、飯を食わせて、いつもの元気な牧野に戻してやりたかった...

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その先へ 30

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きらびやかな会場に踏み込めば、視線が俺達に一斉に集まる。それはいつものことでムカつきもしないが、ある一定数、浅ましい奴等ってのが存在する。こっちからはバレバレなのに、然り気なさを装ったつもりでいるらしい、我先にと近付いて来る奴ら。こういう余裕のない者ほど能力は低く、今後の付き合いはないだろうと思わせる小物ばかりで、時間を割くのも無駄だ。近付いて来る人の気配に、俺の腕に絡まる牧野の手に力が込められる...

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その先へ 29

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隣に座る牧野を見遣る。力を込めた手を組み合わせ俯く姿は、本気で憂鬱なんだと窺わせる。「大丈夫か?」「…………」今、俺達は、とあるパーティーに赴く車の中。この時期からやたらとあるパーティーの一つで、今夜はパートナー必須だ。主催者側との関係を鑑みれば、出席以外の選択肢はなく、だとしたらパートナーももれなく連行って訳で、当然、その役を担ってもらうのは、なかなか首を縦に振らなかった牧野だ。西田が根気よく駆け引...

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その先へ 28

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※ 今回のお話は、軽めではありますが、数行ほど大人的表現が含まれています。この手のものが苦手な方は、これより先へお進みになられませんよう、お気をつけ下さい。牧野と西田がこの部屋から出ていって、既に二時間近く。一体、何年がかりの誤解を受けていたんだと、必死の訂正に消費した気力の余力はない。静まり返る執務室に一人。そもそもよぉ……と、仕事も放棄で胸の内で不平を溢す。この俺が女関係で疑われるなんて、心外以外...

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その先へ 27

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道明寺と海ちゃんの想像だにしなかった驚愕の事実。その驚愕の余波は突然に私へと向けられた。「それから、これからはパートナーは牧野さんにお願い致しますので」「それは絶対嫌です」「ですが、このような問題が起きた以上、やはりこの先は信用出来る方にお願いする他ありません」道明寺の存在を置き去りに、執務室を後にしながらの私は、西田さんから執拗なまでに説得され続けている。でも、どうしてもパーティーだけは避けたか...

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私信となります

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本日は私信となります。更新に辺りコメントを頂きました皆様には、まだお返事を書かせて頂いてない中、先にこのような形を取らせて頂きますことを、先ずはお詫び致します。申し訳ございません。夜に改めて書かせて頂きたいと思っております。そして、引き続きですが、申し訳ございません。3月にコメントを下さり、私から返事がないままという、あってはならない状況にお心当たりの方がいらっしゃると思います。本当にすみません。...

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その先へ 26

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軌道修正したはずが、どうしてこうなる。ベラベラと細かいことまで喋る西田が憎らしい。俺に何か恨みでもあんのかよ! 尚も続けられる話にまた警戒しなくてはならなくなった俺は、腕を解きデスクを指先でコツコツ叩いて落ち着きをなくしていた。「パーティーとは別に、副社長を心配なさった社長が、お見合いを何度かセッティングなされることもあったのですが、その度に何かしらしでかしますので、ならばと、周りの女性を牽制する...

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