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Archive: 2018年03月  1/2

その先へ 21

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美味しいお酒と美味しい料理に、弾む会話。とは言っても、道明寺発信の、答えるのは私。そんな図式がずっと続いてる。何処に住んでる?とか、独り暮らしか? とか。あの緑色の正体はなんだ?まで様々に及んで。なんで機嫌悪かったんだ? って質問には、弟とチョット、と嘘で濁し、身近にいた道明寺に八つ当たりしてしまって『ごめん』と謝ったそこだけには、そっと本音を乗せた。念のため、カフェで好きなやつ全部教えろ!って言わ...

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その先へ 20

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急に何を思いたったのか、道明寺から突然、夕食に誘われた。こんなことは再会してから初めてで、あまりの想定外に、丁寧に断りを入れてはみたけれど、言い出したら聞かないのは昔と同じ。『行かねぇなら、今夜は飯食わねぇ』まるで、子供みたいに駄々をこねる。更には、西田さんという援軍まで引っ張り出し、『今夜は残業ということで、夕食の監視もお願い致します』と、頭を下げられた。正直、引け目もあった。ランチの監視を放棄...

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その先へ 19

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急に立ち止まった俺の後ろには、西田と黒の塊SP集団。立ち止まる一行に、エントランスに居る者達からの視線を集めても気にもならない。気になるのはただ一つ。「副社長、どうかなされましたか?」「あそこに寄ってく」西田が俺の視線を追う。「あのカフェですか? 」内心、驚いてるのかもしれないが、それどころじゃないと歩き出すと、黙って西田も付いてきた。前に牧野が買って来たのは、多分この店だろう。「あそこで注文すんの...

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その先へ 18

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コーヒーを置き、一瞥をくれる。「普通ですね」これ、牧野の朝一チェック後の言葉。俺をチラ見してから、棒読みセリフを言い終えるまで僅か3秒。「こちらの確認をお願いします」「分かった」この4文字、俺の返事。たった4文字を言い終わった時には、牧野は背を向け執務室のドアへと向かっていた。ここまで1分にも満たない。『おはようございます』と言って、部屋に入って来てから出て行くまでの、牧野の最短記録滞在時間。声音...

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その先へ 17

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「ふざけんじゃねぇっ! 俺に触るなっ!」絡み付く腕を力任せに振り払い、悲鳴を上げた女がカーペットに転がっても知ったこっちゃねぇ。「てめぇを抱けだと?」「あ、あたしは、ど、道明寺くんが好っ……!」「煩せぇっ!」デスクに拳を振り降ろし、倒れたまま、はだけたワンピースで胸元を隠す女を、冷えた笑みで見下ろす。「なぁ、教えろよ」「…ぇ?」「てめぇの見ても勃ちもしねぇのに、どうやって突っ込むんだ?」「ッ……ひ、酷い…...

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その先へ 16

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慢性化してた気だるさが、近頃は感じらんねぇ。これも煩い小姑のお陰か。昼は、しっかり摂るようになったし、夜もだいぶ酒を控えるようになった。朝は食べねぇし夜は適当だが、睡眠薬も飲むようになって、前とは違って朝から身が軽く感じることも多い。季節の変わり目も良好で、秋の色が濃くなった今も、体調は以前より随分とマシだといえた。けど、体調と反比例して、俺の気分は著しく低下中だ。「またかよ。しつけぇな」俺のじゃ...

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その先へ 15

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海ちゃんに会った日。夜に行われた研究会での話は、耳を掠めて行くだけで、まるで身が入らなかった。まさか、まだ付き合ってたなんて……。研究会が終わりタクシーで帰って来てからもまだ、衝撃が心を占める。お風呂にでも入って疲れた頭と心を癒そう。そう思ってゆっくりバスに浸かってはみたけれど、意識せずとも頭は勝手に海ちゃんへと繋がってしまう。それは、ベッドに入ってからも同じだった。ベッドに潜り込み30分。そういえば...

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その先へ 14

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「ほら、ちゃんと野菜も食べて!」「…………はぁ」「こらっ、溜息吐かない!」向かい合いながらソファーに座り、道明寺と共に用意されたランチを頬張って、30にもなる男を相手に母親みたいなセリフを吐く。何の気まぐれなのか。何故だか先週からお昼を一緒に摂るようになった。この執務室で二人、道明寺と一緒に。『もしかして、一人の食事は寂しかったの?』と、初日に訊ねれば、『おまえの午後からの仕事が遅れないよう、時間の有効...

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その先へ 13

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3週間ほど海外出張に行ってた俺は、昨夜遅くに帰国した。今朝、久々に日本支社に出社し、西田から1日のスケジュールを告げられた後、以前にも聞かされていたらしい1週間後の予定までも確認される。「それと来週の火曜ですが、前にもご報告しました通り、アリオスジャパン主催のパーティーへ出席となっております」「あー……忘れてた」「ちなみにパートナー同伴です」「欠席に───」「出来ません」欠席にしろ、と言い終わる前に却...

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その先へ 12

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道明寺HDに勤めてから1ヶ月も過ぎれば、道明寺も諦めたのか、私を完全無視することはなくなっていた。要は粘り勝ちだ。逆らえばギャンギャン吠えられると思ってるのか、はたまた、苦いお茶を飲まされると相当警戒しているのか、諦めの溜息を吐きながらも、最近ではポツリポツリと話してきたりもする。今日も視察に行くから同行しろ、と昨日になって直接言ってきたのは道明寺だった。道明寺と西田さんと共に朝一で向かったのは、売...

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