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Category: その先へ   1/6

【『その先へ』をお読みになる前に】

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お越し頂きまして、ありがとうございます。これから連載する長編『その先へ』ですが、このお話には、ショッキングな内容が含まれております。中には嫌悪感を持つ方もいらっしゃるかもしれません。それを踏まえた上で、どんな内容でも大丈夫と思われる方のみ、先へお進み下さいませ。初連載でこれは、と私自身悩みましたが、温かく見守って頂けたら幸いです。尚、『ご挨拶とお願い』でも記載しておりますが、誹謗・中傷等は、誠に勝...

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その先へ 1

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お越し頂きありがとうございます。お進みになる前に【『その先へ』をお読みになる前に】を事前確認して頂き、ご了承頂いた上で先にお進みになられますよう、宜しくお願い致します。*****あの日に心を置いたまま、時だけが流れた。ただ静かに。だけど確実に。音もなく刻まれた時の中で、あの頃何も持たないただの少女だった私は、弁護士と言う名の武器を手に入れた。資格があれば生きていける。喩えこの先1人だろうとも。そう...

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その先へ 2

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──── 一体、何が起きているというのか。私は今、先週、会ったばかりの老婦──神島(かみじま)サチさんと、その夫である神島誉(ほまれ)さんに、半ば強引に誘われ、休日の昼、待ち合わせ場所に指定された銀座の寿司屋の前に来ていた。自らの意思では来ることもないだろう高級店に足を踏み入れ、個室のドアが店員によって開かれた、その刹那。ドクンと鼓動した胸は痛みを伴い、一瞬、息をするのも忘れた。そのお陰で、衝撃の声は漏らさ...

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その先へ 3

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それは、本当に偶然だった。この世界に身を投じ、右も左も分からずの私を気に掛けてくれたのが、今、目の前にいる神島会長と、今日はまだ姿の見えないその奥さんだった。鉄の女と呼ばれる遥か前。初めて大きな仕事を任され手を組んだのも、当時は社長であり、神島会長が率いる神島コーポレーションだった。それ以来、仕事を抜きにしてもこうして屋敷に訪れ、分刻みのスケジュールの中、僅かな時間を見つけては費やしている。この時...

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その先へ 4

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目の前の男に、見合いはなかったことに、と告げようとした瞬間。ノックと共に、失礼しますと入ってきた仲居さんによって、入れていた気合いは脆くも崩れた。面と向かって話すのは、何しろ12年ぶり。幾ら多少の落ち着きを取り戻したとはいえ、居るだけで存在感をアピール出来る男を前にしては、一握りの覚悟が必要だった。仲居さんが並べるデザートであるメロンを見ながら、人知れず力を込める。入ってきた時と同じように声を掛け出...

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その先へ 5

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「お疲れ様でした。どうでしたか?」迎えに来させたリムジンに乗り込めば、車内で待機してただろう西田の声に反応し、チラリと睨む。「休みの日に、しかも、朝っぱらから拉致らんとばかりにSPを部屋に雪崩れ込ませ、監視役にお前まで参加した、あの見合いとやらを言ってんのか?」「はい。その嫌み通りのお見合いの事で間違いありません」「だったら聞くまでもねぇだろ。女の方もお断りだとよ」窓の外に目をやり、盛大にため息をつ...

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その先へ 6

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『姉ちゃん、今夜は、大学時代の友達に、飲みに誘われてて……』『了解! 飲みすぎないようにね』『姉ちゃんは? 遅くなりそうなら、途中、合流して一緒に帰ろうぜ!』『私は今日は定時予定。サッサと帰ってくるわよ。じゃあ、進は食事要らないね』『うん。戸締まりちゃんとしとけよ』『あんた、私をどんだけ子供扱いする気? ほら、もう行かないと遅刻するよ』あれから1ヶ月。今朝も姉弟二人暮らしの1日は、いつもと変わらないスタ...

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その先へ 7

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「牧野さん、来て下さりお礼申し上げます」西田の交渉に応じてくれるか否か。静寂なメープルの執務室で一人、願いが届くようにと待った。その待ちわびた人物が姿を見せた時。逸る気持ちを抑え、今度は私の番だと気を引き締めた。チャンスはこの一度だけ。もう次は訪れないし、彼女の意思を尊重しないわけにはいかない。「どうぞ、こちらにお掛けになって」ソファーへと牧野さんを促し、その対面に腰を下ろす。向かい合う形で彼女を...

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その先へ 8

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「こちらは、今日から副社長付として働いて貰うことになった、牧野つくしさんです。インハウスロイヤー兼、西田のサポートもして頂きます」「牧野です。宜しくお願いします」朝一からババァに呼び出されて来てみれば、この茶番だ。何喰わぬ顔して挨拶なんかしやがって。企みなんてないなどと、どの口が言った?神島には、変な動きはなかった。ババァにも気を付けちゃいたが、それらしい報告も受けてねぇ。この3ヶ月、注意は怠って...

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その先へ 9

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医者が帰って静まり返る執務室。暫くすると、「本日の業務はこれで終わりです」女と一緒に入ってきた西田が告げる。いつもより早い時間だ。「まだいい。仕事持って来い」「本日、片付けるものはもうありません」西田の言葉に舌打ちする。「今日は薬を飲んで、ゆっくり休んで下さい。では、私はこれで、お先に失礼します」そう言い置いて出て行こうとする女を呼び止めた。「おい」振り返ったはいいが、誰が呼ばれたんだか分かんねぇ...

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