Category: 手を伸ばせば⋯⋯ The 2nd 1/2
手を伸ばせば⋯⋯ The 2nd 1.

こちらは、『手を伸ばせば⋯⋯』の続編になります。但し、本編とは趣が異なりますますので、それでも大丈夫な方様のみお進みになられますよう、宜しくお願い致します。少しでも楽しんで貰えたなら幸いです。それではどうぞ!司と牧野の間に横たわった12年にも及ぶ溝は、一体何だったんだ。これが、今の俺の頭に常時ある疑問である。マンションから牧野が姿を消したあの日。野生の勘を存分に発揮し牧野の居場所を突き止めた司は、見事...
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手を伸ばせば⋯⋯ The 2nd 2.

新たな性格が誕生した、という突飛な誤算はあったが、完全に病気を克服した牧野と彼女を支えた司は、間もなく婚約を発表した。とは言っても、ビジネスにおいては過ぎるほどの有能さを発揮する牧野ではあるが、普通の一般人だ。元から派手派手しい騒ぎを好まない牧野に配慮し、また、騒がれて嫌な思いをさせないためにも、司は一人で婚約会見を行い、無事に結婚式を迎えるまで、世間には牧野の名を伏せたままにしてある。司の考えと...
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手を伸ばせば⋯⋯ The 2nd 3.

色気を無闇矢鱈に振りまき司へと近づいてきた女。直ぐさま敵認定したと思われる滋と桜子は既に警戒態勢で、女を睨めつけ威嚇している。しかし、女は涼やかな一瞥をくれただけでさらりと流し、司の右腕にそっと手を添えた。「私、ずっと連絡をお待ちしておりましたのよ?」司を見上げて女が艶やかに笑う。目尻にある黒子が、余計に濃艶を醸し出している。そんな女を見下ろす司は、初めこそ「誰だ?」と理解していないようだったが、...
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手を伸ばせば⋯⋯ The 2nd 4.

「道明寺さんの趣味が変わった? 女性の好みについて言ってらっしゃるのかしら?」首を傾げた牧野は、笑みを保ったままで女に訊く。「えぇ、そうよ。事実、司さんはこの身体に溺れてましたもの」⋯⋯溺れてたのか。司を除いた仲間全員が、心に同じ呟きを落としたに違いない。顔を引き攣らせる司にダチ達が白い目を向ける中、自信ありげに女は続けた。「これでお分かりでしょ? 司さんの好みの女性というものが。だから私、心配して...
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手を伸ばせば⋯⋯ The 2nd 5.

「もう喉カラカラ!」たった今。女同士による苛烈な戦いに幕を閉じたばかりの牧野は、その余韻すら見せず、テーブルに並んだカクテルの一つを手に取り、喉を潤している。その横顔は、品が漂い美しく、愛憎が生み出した修羅場を演じた女だとは、目撃者でなければ誰も信じまい。まるで何事もなかったような牧野の態度。端から見ても分かるほど恐怖に凍りついている司は、言葉も見つからないのか、牧野を目で追うのみ。気持ちは、よー...
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手を伸ばせば⋯⋯ The 2nd 6.

牧野の謎発言により発生した沈黙から、いち早く抜け出したのは腹黒王子だ。歳が30にもなるというのに、首をコテっと倒す仕草が不思議と様になる類が牧野に訊く。「牧野、ファイルナンバーってどういうこと? 11番って?」「彼女は11番。司と関係あった女性に番号を付けてみたの」付けてみたって、どうしてそんな発想になった! と全力で牧野に問いたい。それが通じたのか、俺の心中に応えるように牧野が言う。「だって、その方が...
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手を伸ばせば⋯⋯ The 2nd 7.

今夜のパーティーには、杉崎とはまた別の過去女がいたと話す牧野に、誰も口を挟もうとはしなかった。それは、今までの様子から一変した牧野のか細くなった口調だったり、瞳に悲しみが浮かんで見える表情だったり。無闇にからかって良い話の類いではないと察せられ、お調子者たちの口を噤ませた。「彼女のこと、全く覚えてないみたいね」牧野から探るような眼差しを向けられている司は、牧野の言葉通りなのだろう。心当たりがないよ...
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手を伸ばせば⋯⋯ The 2nd 8.

悪夢のパーティーから二週間が経った。司にとってあの一夜は、生きながらにして味わった地獄であったろう。地獄に招待したのは、何を隠そう婚約者。自らが招いた種とはいえ、司は膚で、心で、嫌と言うほど婚約者の恐ろしさを知ったはずだ。だが、恐怖をいとも簡単に作り出す婚約者ではあっても、司の愛は微塵とも変わらないらしい。あの日、あの晩、俺たちが帰った後。シャワーを浴びた司が寝室で見たものは、目を赤く染めた牧野の...
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手を伸ばせば⋯⋯ The 2nd 9.

「失礼します。わぁー、牧野さん! お久しぶりですぅ! 秘書課に移られてから全然会えなくて、まだまだ教えてもらいたいことが沢山あったのに、本当に────」「松野くん? まさかくだらない話をするためにここにきたわけじゃないわよね? 要件を早く言いなさい」副社長室にやって来たのは、以前、牧野と一緒に仕事をしていた松野だ。牧野を見るなり喜びを全身で表すとは、相変わらず学習能力が低い松野らしい。早々に牧野から、...
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手を伸ばせば⋯⋯ The 2nd 10.

「今日は、付き合わせて悪かったな」「いいえ。予定もありませんでしたし、先輩と美作さんのお役に立てるなら、これくらいお安いご用です」パーティーも無事に終わり桜子をワインバーへ誘った俺は、今夜、同伴してくれたお礼を込めて、ヴィンテージもののオーパス・ワンを開け、二人でグラスを合わせたところだ。例のご令嬢も問題ない。桜子が二言三言、彼女の耳元で何かを囁いただけであっさり退散。それはもう、肩すかしを食うほ...
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